「仙台・筋弛緩剤冤罪事件『守大助さんを支援する徳島の会』」に参加して

24日(土)午後から「仙台・筋弛緩剤冤罪事件『守大助さんを支援する徳島の会』」の第13回総会に参加しました。

仙台・筋弛緩剤冤罪事件は、2000年、宮城県仙台市の北陵クリニックの患者さんの死亡や急変が相次いだことについて、患者5人の点滴に筋弛緩剤「マスキュラックス」を混入し、一人を殺害、4人の殺人未遂事件を起こしたとして、クリニックに勤務していた准看護師・守大助さんが2001年に逮捕、起訴され、無期懲役が確定した事件です。

当時、私も看護師として勤務していて、同業者が殺人罪に問われるような事件を起こしたと報道されたことに大きなショックを受けたことを覚えています。マスコミは、連日、「連続点滴魔殺人事件」などとセンセーショナルな報道を行い、多くの人が守さんが犯人だと思い込まされてきたと思います。

 

犯罪に使われたとされる筋弛緩剤「マスキュラックス」は、患者さんの急変時への救命措置で気管挿管を行う場合に使うため病棟の救急セットに常備されていましたが、この事件以後、厳重管理の薬品として、日勤、準夜、深夜と各勤務帯で本数を確認するなど管理が大変厳しくなりました。

しかし、事件当初から点滴混入で死亡することがあるのか?と医療関係者の間で疑問の声が上がっていました。

守大助さんも、いったんは自白したものの、以後は無実を主張。弁護団は、患者の症状は筋弛緩剤によるものではなく、冤罪だとして再審を求めてたたかい続けています。
徳島の会は2006年に徳島救援会が立ち上げ、会員を増やし続けながらたたかいを支援しています。
結成時は88名だった会員が、現在では530名にまで増えているとの報告に、粘り強く活動を広げてきた中心メンバーの努力に頭が下がる思いです。

今日は、「布川事件」で再審・無罪を勝ち取り、現在は国賠裁判の原告として活動されている桜井昌司さんの講演もありました。
桜井さんは、逮捕された当時は不良で盗みもしていたそうです。別件で逮捕され、その後殺人事件の犯人にでっちあげられ、自白までするのですが、その後は一貫して無実を訴え44年間たたかい抜いた方です。自分は不良だったけれど、人は殺していない、犯人ではないという「真実」に正直に生きたいと思い、こんな自分を支援してくれる人たちがいるということを支えに、獄中で人間として成長してきたというのです。
獄中で「死刑にされたら」と考えて「生きる」意味を悟った。「その人、一人の存在を大切にすることが『人権を守る』ということだ」とわかったそうです。
自分は「不運」な目に遭っているけれど、「不幸」ではない。自分の無実を信じて励ましてくれる人がいる、自分のために一生懸命活動してくれる人がいる、獄から出てくるのを待ってくれている人がいる。彼のこの思いと周囲の支援者たちとの真心の交流そのものが彼の学ぶ意欲を高め、人間性を磨いていったのだと思いました。

桜井さんが語った「人生に無駄なことは一つもない」「今日は一日限り。人生は一日限りの毎日」だという言葉も心に残りました。
獄中で音楽に親しみ、手紙をたくさん書き、詩を書き、歌を歌うようになったとのことで、最後にその歌声を披露してくれましたが、プロ顔負けの情感こもった歌声に驚き、聞き惚れました。

桜井さんの話を聞き、あらためて日本の警察組織や司法の問題、民主主義について考えさせられると同時に、救援会の存在意義、その活動のすばらしさを実感した総会でした。

冤罪事件で獄中でたたかっている守大助さんに、あきらめずに、希望を失わずに、一日一日、生き抜いて、「真実は必ず勝つ」のだから。私たちもあたなのことを忘れず、支えていきます。― そう伝えたいと心から思いました。