金木犀の思い出


 あちこちで金木犀が香る季節になりました。
この香を嗅ぐと必ず思いだすのが、父のことです。
 私の父は、20代の頃に、徐々に視力が落ちる難病にかかり、30代の頃には全盲となりました。
花の香が大好きで、自宅の庭にはいつも香のよい花木が満ちていました。春は沈丁花、秋には金木犀。特に秋の金木犀の香を嗅ぐと、私の頭の中には、大好きな父と過ごした子供の頃のことが走馬灯のように浮かんでくるのです。
 父は急性骨髄性白血病で77歳の生涯を閉じました。病を得た父は、闘病の合間に自分史を綴るように、たくさんの短歌を詠みました。

 如月の望月の頃 死にたけれ 花は見えねど 香に包まれて
 これが、父の辞世の句となりました。
 これからも、少しずつ父の短歌を紹介していきたいと思います。