徳島健生病院で健康診断を受けました。
胃カメラを待っている間、待合室の壁に貼ってある「お知らせ」に目が行きました。
特に「無料低額診療事業のお知らせ」に注目。
徳島健生病院は、私が2013年まで勤務していた病院ですが、経済的な困難を抱えた方が病院の窓口負担を支払えずに滞納する例がよくありました。
無料低額診療は、こうした経済的な困難を抱えた方(世帯の収入が生活保護基準の140%未満)について、窓口負担を低額または無料にする制度です。ただ、自己負担分を軽減または無料にした場合の補填はどこからもなく、病院が自腹を切る形になるので、県内で実施している病院、薬局はごく少数です。
健生病院でも事業に取り組む際、職員から病院が損をする事業になぜ取り組むのかが問題になりましたが、窓口負担が払えないからと、今まで受診できなかった患者さんが受診できるようになれば、少なくとも診療報酬分(医療費の7割~9割)は新たに入ることになる、それは患者さんにとっても病院にとっても得になる話だと、相談室のメンバーが説得して回り、事業開始にこぎ着けました。
(県のHPで調べても民間の病院・薬局・歯科検索「スクエル」で調べてもなぜか徳島健生病院の名が出てきませんでしたが、徳島健生病院で実施しています。)
もう一つ、「患者の権利指針」に注目。
徳島健生病院は、医療生協の病院として早くから(1980年代からだったでしょうか)「患者の権利」について組合員さんとともに議論して決定し、当時は「患者の権利章典」として発表しました。
診療情報の開示も、1990年代、まだ紙カルテだった頃から取り組んできました。(私が勤務していた病棟では、週一回の医師の総回診の時に患者さんにカルテをわたし、自由に見ていただいていました)患者さんからは、医師の字が読めない(達筆すぎて?)、専門用語がわからないと質問されたり、看護記録を見て「私はこんなこと言っていない」と指摘されたり、中には、「私がこんなものを見ていいのかわからない」(カルテは、患者が見てはいけない秘密文書のように思っていた方)とカルテを手に取ることさえしない方もおられました。
看護協会で教育委員をしていた時に、この経験をもとに、看護師の研修テーマに「情報開示」を取り上げ、研修会を企画したことも思い出しました。
今では、患者の権利についての明記やカルテ開示も珍らしくなくなりましたが、患者さんが「医療の主体者」であり、医療従事者と「共同して」病気に立ち向かう権利があることを明記している病院は少ないのではないでしょうか。
被爆者健診、振動病やじん肺等の職業病健診と治療・リハビリ、肝臓病の腹腔鏡検査、呼吸器疾患の患者さんの在宅酸素療法(県内初でした)、まだ訪問看護の制度さえなかった時代に退院後訪問や在宅患者さんの入浴等に取り組んだ看護師チーム。ALSという神経・筋難病の呼吸器装着患者さんの在宅医療等々、昔から時代の最先端の取り組みを行ってきた健生病院で看護師として働けたことは、私の大きな財産です。
相次ぐ医療・介護の改悪で、医師不足、看護師不足も深刻、経営も大変厳しい状況ですが、「患者の立場に立つ医療・看護」を掲げる徳島健生病院の新築リニューアル事業が成功することを願っています。
ちなみに、この日の胃カメラ担当医師は、ベテランのY医師。
さすが上手で、全く苦痛なく終わりました。