過労死ゼロを目指して    「過労死等防止対策推進シンポジウム」に参加して―

23日(土)13時30分~徳島文理大学のキャンパスで開催された「過労死等防止対策推進シンポジウム」(厚生労働省主催)に参加しました。

大学の教室で開催されたこともあって、これまでとは違って、学生さん等、若い人たちの参加も多く、120人の参加者で会場はほぼ満員でした。

過労死事例の認定、救済の現場で過労死問題に取り組んでいる弁護士さんが語る「過労死のしくみと現状を学ぼう」と題した講演は、熱意のこもったわかりやすいお話でした。

長時間労働による脳・血管疾患、精神障がいの労災申請は、年々増えているものの、労災として認定された数が一定で増えていないことについて、徳島労働基準監督幹は、申請件数増加は、労働者の意識の高まりと理由づけたのに対して、岩城弁護士さんは、「長時間労働で実際に病気になる人は増えている。認定数が変わらないのは、国の認定基準が厳しすぎるからだ」と、バッサリ。 日本の労働基準法についても、「ザル法」だと指摘しましたが、この言葉に現場で過労死問題に取り組んでいる専門家としての怒りが込められていることを感じました。

続いて、「全国過労死を考える家族の会」代表の寺西さんが講演。 寺西さんは、飲食店で働いていたご自身の夫を、1996年に過労自死で亡くされ、労災認定を求めてたたかった方です。 当時は、まだ「過労死」という言葉さえなかった時代。過労自死を認めない会社の対応に、労災申請しようにも、証拠集めなど、申請者側に立証責任があるとされる裁判の大きな壁に、一度はあきらめたものの、「夫の生きた証を」と、岩城弁護士の協力を得て地裁に提訴し、認定を勝ち取った経験をとつとつと語られました。 寺西さんの、「誰かがやってくれるのならおまかせしよう」と思っていたが、裁判をたたかうなかで、人任せでなく、自分が主体となって取り組まなくてはと思うように変わったという言葉が印象的でした。 これから就職する学生さんや家族の働き方に不安を感じて参加された方に、過労自死の遺族としての苦しみを語り、「命より大切な仕事はありません!」「もうだめだと思ったら仕事を辞める、辞めさせる勇気を持とう」と、強く訴えられました。

お二人の講演の後、フロアからたくさんの質問や、家族の働き方を心配しておられる方からの相談等が出されましたが、労基局、岩城弁護士、寺西さんと分担して、一つ一つに丁寧に答えていただいたことも良かったと思います。 「過労死」が大きな社会問題になり、「家族の会」の悲願であった過労死防止法がやっとできたと思っていたら、「働き方改革関連法」が強行され、今年4月から施行されたことで、かえって過労死を増やしかねない事態になっていると、今の労働法制改悪の問題もしっかりと示されました。 また、教員の「変形労働制」導入についての質問にも、教員の長時間労働解消にはつながらず、かえって負担を増やすことになることを具体的に示して答えられました。

過労死をなくし、健康で充実して働き続けることのできる社会へ、「8時間働けば、『普通に暮らせる』社会」の実現のためにも、財界の利益優先の今の政治を変える取り組みが求められていることを切実に感じたシンポジウムでした。